ルルーのIS日誌 入学式の月

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「ルルーちゃん、ハンカチ、ティッシュは持った?」

「うん。だいじょうぶだよ」

「アシェは?」

「ちゃんと履いてるよ♪」

こんこんと待機状態のアシェンプテルをならす。

「身体には気をつけるんだよ。困ったことがあったらすぐに連絡していいからね」

「うん。ルルーがんばるからね」

そう言ってルルーは皇技研の職員に元気よくVサインをする。

そうこうと職員とルルーが戯れていると黒塗りの自動車がやってきた。

「あ、行かなきゃ。皆さん、短い間でしたが、ありがとうございました」

そう言ってルルーはぺこりと頭を下げ、自動車に乗り込んだ。

「「「ルルーちゃん、IS学園でも元気でね!!!」」」

「はーい。ルルーはがんばるよ!!」

ルルーは窓から大きく乗り出して、みんなに手を振った。

もちろん、運転手に「危険なので身体を乗り出さないでください」と叱られた。

 

 

 

無事にIS学園の受付を済ませ、寮の自室へ歩いていくルルー。

持ち物といえば、肩からかけてあるバック1つだけ。他の荷物は前日に輸送してあるので問題はない。

「えっと……1020室、1020室……あった」

きょろきょろしながら廊下を歩いて目的地にたどり着いたのだが、周りから視線がちらちらとむけられる。

「どこか変なのかなぁ……」

ルルーはハンドバックから手鏡を出して、身だしなみを確認する。

自慢の空色の腰までとどく髪は皇技研のお姉さんがしっかりと溶かしてくれてほつれや枝毛などは全く見あたらない、あほ毛のラインもばっちりだ。

淡いピンクローズのワンピースもしわもなくふんわりとして、汚れも付いていない。

白の靴下もずれ落ちていなく、ガラスの靴には曇り1つ無い。

ルルーは手鏡をみたまま小首をかしげるが、気を取り直してドアをノックする。

「はい。どなたですか? 今引っ越しの片付け中なのでお相手は出来ませんが」

「えっと、ルームメイトになったルルー・ヒュペリオンです。よろしくお願いしまっ!」

ルルーはドアも開けてないのにお辞儀をしたものだから思いっきりドアにおでこをぶつけた。

「あうぅぅ……」

「もう、どうしたのよ……」

ドアにおでこをぶつけて涙目になっているルルーをドアからシルバーブロンドの少女が見た。

「ドアで頭を打ったのね。私はフェリシア・タングラム。ヒュペリオンさん、部屋に入って。打ったところを確認しましょ」

「はぁい。ぐすっ」

(何このおもろかわいい生物は……いけないいけない。とりあえず、おでこを打っただけみたいだから大丈夫でしょ)

フェリシアはルルーの手を取って部屋の中へ連れ込む。けっして、やましい気持ちはない。

部屋の中は荷さばきの途中で段ボール箱がそこら彼処に置いてあった。

ベッドの上は綺麗にしてあったので、フェリシアは自分が使わない方にルルーを座らせておでこを確認した。

「大丈夫よ。ただ、打っただけだから。改めて、私はフェリシア・タングラム。ルームメイトとしてよろしくね、ヒュペリオンさん」

「あ、はい。よろしくお願いします、ルルー・ヒュペリオンです」

「ストップ。この至近距離で頭を下げない」

フェリシアは頭を下げようとするルルーのほっぺをはさんで下げるのをとめた。

(なにこのぷにぷにふぇいす。いつまでも触ってられるわ!)

ぷにょんぷにょんとルルーのほっぺを堪能していたが、ルルーが不思議そうな顔をしてフェリシアを見たところで我に返り、ほほをそめた。

「あ、えへへへっ」

「もう。仕方ないわね。それじゃ、着替えて。部屋の片づけをしましょ」

「はーい」

フェリシアは照れを隠すため部屋の片づけを始めた。

片づけは夜までかかったが、2人が友達になるのには十分な時間だった。

 

 

 

「はわぁぁ。やっと入学式が終わったね」

「ルルー、朝からたれてるんじゃないの。そろそろ先生が来るわよ」

「はぁ~い」

校長や来賓の長いながーい演説が終わった後ルルー達はクラス分け通りの教室1年3組に来ていた。

フェリシアとルルーは席が隣でもあったこともありのんびりと入学式のことを話していた。

「なんで演説って長いのかな?」

「長く小難しいことを言った方がえらいと勘違いしてるんじゃないかしら?」

「ふーん。おにーちゃんはあんまり長くお話ししないから、ルルー退屈だったよ」

そういうとへにゃーんとあほ毛が垂れ下がる。

「先生の話が長くても態度に出しちゃだめだからね」

「むぅ。サラ先生とリナ先生はそんなにお話長くないよ」

「いや、それ違うから」

ちょっとずれた会話をしていると教室のドアが開き、ジャージを着た女性とスーツを着こなした女性が入ってきた。

「おーし、SHR始めるぞ。座れ、騒ぐな」

そう言って出席簿をぱんぱんと叩きながら壇上に上がったのはサラ・ソフォス。

同行していたスーツの女性、リナ・ソフォスはサラの斜め後ろにたった。

「よく入学できたな、あたしはサラ・ソフォス、担任だ。千冬のクラスに入れなくて残念だったな」

何人かは露骨に残念そうな顔をしているが、大半は特に気にしてはいなかった。

「ねーねー、千冬のクラスってなーに?」

事情がよくわかってないルルーは隣のフェリシアにひそひそと尋ねた。

「あなた、なんで知らないの。初代ブリュンヒルデにしてソフォス先生の最大のライバル、織班千冬先生の事よ、1組の」

「はにゃ。それってどのくらい凄いの?」

「あのね……オリンピックの金メダルを取るようなもの」

「はわー、すごいん、にゃ!」

「こらそこ、私語をするな」

フェリシアが顔を教壇の方に向けるとサラがチョークを指で弾いていた。

「す、すみませんでした」

「ごめんなさーい」

フェリシアは立ち上がり頭を下げ、ルルーはチョークのぶつかったおでこを押さえ、半べそで謝った。

「質問があるなら次からは挙手するようにな。じゃ、次リナ」

「リナ・ソフォスです。この三組の副担任を担当します。皆さん、一年間よろしくお願いします」

リナは一歩前に出て自己紹介をした。

「名字でわかるようにあたし達は姉妹だ。細かいことは優秀な妹に任せているのでそのつもりで」

「困ったことがあれば気軽に相談してくださいね。サラ先生は大雑把すぎるところがありますから」

「そう言うことなのでトラブルはリナに押しつけるように」

けらけら笑いながら言うサラのいい加減な宣言にリナのほほは引きつりつつもポーカーフェイスを貫き通した。

(((いつも苦労してるんだ)))

なにげにクラスの意志が初めて統一した瞬間だった。

 

「よーし、全員の自己紹介は終わったな。では、クラス代表を決めようと思う。やることと言えば、生徒会などが開く委員会への出席。催しものなどがあればそのまとめ役。まあ、それらは副代表に任せればいい。メインの仕事は学期ごとにあるクラス対抗戦で戦い勝利することだ!!」

どや顔で言うリナの表情からは1組に負けることは許されないという雰囲気がありありと出ていた。

「補足ですが、クラス代表は1年間、変更できないので覚悟を決めてください」

サラが補足するとクラス無いがにわかにざわめき出す。

「どうする……負けたらリナ先生が怖そう」

「それに一組には代表候補で専用機持ちがいるんでしょ」

「えー、それじゃ勝ち目無いじゃん。私はパス」

「どうすんのよ」

わいわいがやがやと誰もがやりたくない、他の人がやればいいのにと言い出し始めた。

ルルーは状況がわからず、きょろきょろと周りを見たりしていた。

「立候補はいないか。推薦でも構わないぞ」

リナは生徒達をおもしろそうににまにましながら見ていた。

リナ自身、自分のクラスに1組にいるセシリア・オルコット以上の実力者は一人しかいないと思っている。でも、その一人は全く自覚もないし状況もわからずきょろきょろしてるだけだ。笑いがこみ上げてきそうでたまらなかった。どのみち、誰がそいつ以外を推薦しようがもう決めているのだ。

その思惑を知っているサラは頭痛でこめかみを押さえていた。

「リナ先生。いい加減候補を上げたらいかがですか。生徒全員の実力を把握しているのは私たちだけですから」

「んー。やる気があるやつがいたら悪いじゃないか。先生はやる気がある生徒を応援します」

無駄にきりっとして言い返す。

(こ、この馬鹿姉はぁ!!)

入学初日からサラの血圧の上昇は止まらなかった。冷静な振りはしているが、米神に血管が浮いている。

「おいーい。チャレンジしようかってやつはいないか。でなきゃ、不戦敗になって先生切れちゃうぞ」

「はい」

「お、タングラム。お前が立候補するのか?」

しーんと静まりかえる教室。誰もが「こいつ勇者か!?」と思ったとき、フェリシアは立ち上がり、隣に座っているルルーを指さして、

「ルルー・ヒュペリオンさんを推薦します。先生達も知ってるんでしょ、ルルーが専用機持ちで先輩達と何度か模擬戦をしてるのを」

びしっと指をさした。

対してルルーはきょとーんと指先を見ていた。おそらくあほ毛の上には?マークが浮かんでいるに違いない。

「んっー。タングラム、ダチを売るのか?」

「まさか。私は副代表に立候補して、ルルーの補佐をします」

にまにましているリナにフェリシアはきっと睨みつけた。

(な、何となくだけどサラ先生の気持ちがわかる……完全にこの人、からかって楽しんでる!)

(タングラムさん、本当にすみません……この馬鹿姉はぁぁぁ!!)

「んじゃ、代表にヒュペリオン、副代表にタングラムと。他に立候補、推薦はいないか?」

サラの血圧がどんどん上がっているのをしらん振りして、リナは黒板に名前を書きながら話を進めた。

「ヒュペリオンさんってすごいの?」

「ぽややんとしてるけど大丈夫なのかな?」

「というか、状況わかってないみたいよ。フリーズしてるみたいだし」

「いや、いきなりそうなれば仕方ないって」

「でも、大丈夫かな……」

クラスの生徒も一同に不安そうに話していた。

「ほら、ルルー。起動しなさい」

周りの不安をそっちのけにフェリシアはルルーの肩をつかんでがくがくと揺らした。

「は、は、は……」

「は? どうしたの?」

「は、はわわわーーーーーーーー!!」

ルルーの特大の悲鳴(?)に思いっきりのけぞるフェリシア。

「ルルーがクラス代表? ルルー、一度もダー先輩に勝ったこと無いよ。そんなに強くないよ!?」

「ルルー、ケイシー先輩は3年の専用機持ちよ。その人と同等に戦えるルルーが弱いと言うことはケイシー先輩も弱いって事になるのよ」

「はわ……ダー先輩は強いの!」

ルルーは両腕をぶんぶんと子供のように振りながらフェリシアに言い返す。

「だったら問題ないじゃない。ルルーがクラス代表になる。そして、代表戦で勝つ。そしたら、ケイシー先輩は強いって証明させるんじゃない?」

「はわー。フェリシアさん賢い。じゃあ、ルルーががんばって勝てばいいんだね?」

「そうよ。ルルーは単純で(かしこくて)助かるわ」

「うん! ルルー、クラス代表になるの!!」

(((うわぁ……コントロールしちゃったよ)))

約一名をのぞいてクラス内で意見が一致した

「よーし。ヒュペリオンも了承したな。他に立候補はいないか? いなければ、この2人にクラス代表を任せるぞ」

「大丈夫よね、3年の先輩に手ほどきを受けてるみたいだし」

「いざとなったらタングラムさんがどうにかするって」

「あとは神に祈るしかないよね」

(姉さん、いい加減自重してください。久しぶりにい、胃が痛みます)

「よし、いないみたいなので決定だ! ヒュペリオン、意気込みを言え」

びしっとリナが無駄に格好をつけてルルーを指さす。

「はい!」

ルルーもそれに答えて立ち上がる。

「ルルー・ヒュペリオンです。今回、クラス代表になりました。重大な職務だと思っています。代表戦はしっかりしないとダー先輩だけじゃなくって、クラスのみんなにも迷惑かけると思うから、思いっきりがんばります! みんな、よろしくお願いします」

そう言って、ぺこりと頭を下げて、にぱーと笑った。

(((なんか信用できるかも!?)))

「ヒュペリオンさん、がんばってね」

「うん。応援してるよ。優勝目指そうね」

「3年生の先輩に稽古とをつけてもらってるならいけるいける!」

「あ。ルルーのことなら、ルルーって呼んでいいよー♪」

「「「ルルーさん、ファイト!」」」

「うん。ルルー、がんばるの!!」

「はい。その位にしましょうね」

騒がしくなりかけた教室をリナが手を叩いて制する。

「タングラムさん、ヒュペリオンさんのフォロ任せましたよ」

「はい。言い出しっぺですから、やれる限りのことはします」

「困ったことがあれば、先生を頼ってください」

そう言って見つめ合う2人。その間には面倒な人物のおもり役を引き受けたもの同士の(1人は自発的にだが)共感があった。

「では、1年3組はクラス代表ヒュペリオン、副代表タングラムを中心にして代表戦を勝利すること! 優勝クラスには今学期デザートフリーパス券が貰えるので奮起するように」

「「「これは、絶対にがんばってもらわないと!!」」」

「は、はにゃー! がんばるー」

こうして、1年3組のクラス代表はルルー・ヒュペリオンに決まり、クラス代表戦を戦っていくことになった。

 

 

 

ルルーの日記 入学式と初日

 

いきなりびっくりだよ、お兄ちゃん。

ルルー、クラス代表になっちゃった。

クラスのみんなのためにも、時々練習に付き合ってくれるダー先輩のためにもルルーは全力でがんばるね。だから、応援してね♪

PS:クラス代表戦で優勝するとその学期はデザートが無料になるパスカードをくれるんだって。それもちょっと楽しみ♪

投稿者:ひ~ろ

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